第1章 この気持ちを表す言葉を、私は持っていない
思わずスマホを握りしめて、ぁ、ぁ...と声にならない言葉が出てくる。
そんな様子を見て、蘭丸があー....と罰が悪そうにしている。
相変わらず涼しげな顔のカミュだが、うっすらと目元が赤い気がする。
もう、色んな気持ちが込み上げてきて、止まったはずの涙がまた出てくる。
あー!ランランとミューちゃんが泣かせたー!と声が上がるが、お前が言うな、と見事なハモリを聞かせ、頭を叩かれている嶺二。さすがカルナイ、さっきのライブも最高の歌声だったよ、とあさっての方向に思考が飛ぶ。
イチチ...と頭をさすっている彼は、どこか嬉しそうだ。
「ライブ、どうだった?」
「...っ!さ、最高....!」
ありがとう、そう言って笑う嶺二の後ろで、笑ってる彼らが見える。
マスクやサングラスなどで表情は分からないが、絶対、笑ってる。
そう感じたのは、間違いじゃない。
「また、いつか、絶対に会いに来るから」
ね?とニコッと笑って、去っていこうとする彼らの背中に
「ぁ、ぁ.....っ!!!」
声が出ない。叫んで良いか分からないし、声も掠れてるし、服もネイルも汚れちゃったし、どうせ会うなら、もっときちんとした格好で居たかったけど、胸が詰まって、ぐちゃぐちゃだ。
嶺二が指をさして、そのまま、その手をグーに。
そして、自身の胸にトントン。
届いてるよのサイン。
あっという間に送迎車の中に吸い込まれて、彼らは見えなくなってしまったけど、私はずっと、ずっとそこに立っていた。
また、会える日が来るのかな。
大人の事情があるから、ほんとにそんな日が来るか分からない。
チケット当たるか分からないし、仕事休めるか分からないし、もしかしたらこの世に居ないかもしない。
でも彼らは、そこにさっきまでいて、息をしていて、姿があって、声が聞こえて。
人生何が起こるか分からない。ずっと全力では居られないのも分かってる。
でも彼らから貰った物は本物で、私の感情はどんな形であれ本物だから。
落としたスマホをもう一度握りしめて、空を仰いだ。