第8章 8
side安室透
あの後も彼女と雑談していたが、徐々にお客さんが増えてきた。
「またクリスマスに来ます。体調にきをつけてくださいね。」と言って帰っていった。
気を遣ったのか、なんとも彼女らしい。
今日の彼女は一皮剥けたような表情をしていて、なにかいいことでもあったのかと想像した。
その後彼女は終始楽しそうにしていた。
………リラックスしに来たと言っていた。できたならよかったと思う。
注文のコーヒーやジュースを入れたりケーキやタルトなどの盛り付けながら頭でそんなことを考えていた。
今回も彼女の言動に驚かされることが多かった。
急に顔を赤くしたこと、「独り占め」だと発言したこと、そして僕の表情の変化に気づいたこと。
彼女は今日も僕をすこしかき乱した。
高齢の女性の応援に対してもわかっていなさそうだった。
あの時の彼女のきょとんとした顔が思い浮かび、思わず笑ってしまった。
はっきり会話は聞こえなかった。
でも、僕と仲がいい、昔の自分たちを思い出したなどの発言から親密な関係だと思われたのだろう。
そんな関係に思われたことが問題じゃない、そう見えるほど僕も彼女に近づいていたのだなと思わず苦笑した。
ふと窓の外を見る。
この調子だと本当にホワイトクリスマスになるだろう。
先ほどの彼女との会話を思い出してわずかに口角が上がってしまった。
彼女は気づいてないだろう。
少なからず彼女が来るのを楽しみにしている僕がいることを。
side 安室透 end