第7章 7
side安室透
あの後彼女は「ありがとうございました!また来ますね。」と言い手を振って帰っていった。
「柚希ちゃん帰っちゃいましたね。でも元気そうでよかったですね。」
「ええ、本当に。」
彼女が先ほどまで座っていた席を眺めていると美味しそうにフォンダンショコラとミルクティーを食べていた姿が目に浮かぶ。
1番初めに彼女を見たのは墓参りだった。それからアポロに偶然来て驚いたのを今でも覚えている。
初めこそため息や少し泣きそうな表情を浮かべていた彼女だったけど最近は笑顔が増えたように思う。
そのほかにも少し照れた顔や驚いた顔、泣きそうな顔に笑顔までいろいろな表情を見せてくれる。
何気なく窓の外に目を向ける。ただ彼女の姿はもうない。
冬の夕方は陽が沈むのが早く、暗くなっている。
………無事に帰れるだろうか。次はいつ来るだろうか…。
「…っ、僕はなにを考えているんだ…。」
少し驚いてから苦笑した。
彼女は常連のお客様。
ただそれだけだったのに彼女の姿をみると安心している僕がいた。
来店すれば少し嬉しくて、帰ってしまうと少し静かになった気がした。
ぼそっと呟いた言葉はポアロのBGMにかき消された…。
side 安室透 end