第5章 5
「柚希さん、ホテルから出てくる時の写真がいるので、このあと2-3時間待機になりますが、大丈夫ですか?」
「もちろんです。」
「あたたかい飲み物でも買いましょうか…。自販機とコンビニどちらにします?」
「んー…、じゃあ、あそこのコンビニでも行きますか?」
安室さんはにこりと笑って歩き出した。
先ほどまで繋いでいた左手に寂しさを感じ右手でぎゅっと握り後をついて歩いていく。
歩幅は相変わらず合わせてくれる安室さん。
ただ2人の間に会話らしい会話はない。
しかし空気は穏やかに流れている。
ーーーーーー
コンビニに辿り着く。
ホットドリンクコーナーの前に2人並んでみる。
「柚希さんはミルクティーですか?それとも別のものにしますか?」
安室さんはミルクティーを指差しながら聞いてきた。
びっくりして安室さんをみたあと、私は棚の2段目から青のラベルのミルクティーを取った。
「このミルクティー好きなんです。これにします。安室さんは…コーヒーですか?」
「そうですね。僕はこれにします。」
そういうと安室さんは棚からブラックコーヒーを取った。
………安室さんはブラック派なんだ。缶コーヒーがこんなに似合うなんて…、ずるい。
「他になにかいりますか?」
じっと見ていると安室さんが声をかけてきたので「大丈夫です。」と答えると私が持っているミルクティーをひょいっと取ってレジに向かう。
「安室さん!私が買いますから!」
「いえ、これは僕が買います。」
「だめです!私が出します!」
そういうと安室さんは少し困ったように笑った。
「お気持ちだけ受け取っておきます。」
「でっ、でも…。」
安室さんが肩越しにこちらを見て穏やかな声でいった。
「今は仕事中ですから、ね。」
小さく笑う安室さん。
私はレジで会計する彼の背中を見つめていた。