• テキストサイズ

【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第49章 【第四十四話】泣き声の方へ


リナリーは泣きそうな顔で、微かに笑った。

「……来ないで、婦長」

途切れそうな声で告げる。


「ありがとう」

婦長の目が揺れた。


「兄さんが来てくれた、あの日……」

リナリーは静かに涙を滲ませながら、それでも言葉を続けた。

「もう、逃げられないって思った。あの時、私は逃げるのをやめたの」


そして、真っ直ぐ前を見る。


「やめて……エクソシストになったんだよ」



リナリーはルベリエと共に病室を出ていった。


扉が閉じたあとも、泣きそうに笑った彼女の顔が、ラビの目の奥へ焼き付いたまま消えなかった。


追いかけたい。
止めたい。

――止める権利が、オレにあんのか。


リナリーは、自分で選んだ。

分かっている。


それでも、あんな顔のまま行かせることなんてできなかった。


「……クソッ」

ラビは踵を返し、病室を飛び出した。


「ラビ!」

婦長の声にも振り返らず、暗い廊下を駆けていく。



走りながら、頭の片隅でひどく冷静な声がした。

――記録者が、何をしに行く気だ。


――うるせぇ。


赤い非常灯が点滅する廊下には、警報音と崩落音、どこかで上がった誰かの悲鳴が入り乱れていた。

本部が壊れていく音の中で、それでも前を行くリナリーの背中だけは見失わなかった。


角を曲がった先で、二人に追いつく。

ルベリエはラビへ一瞥だけを寄越した。


「……ふん。ブックマンの“規約”か」

それきり、何も言わなかった。


リナリーは裸足のまま、青ざめた顔で前へ進んでいる。


三人は通路を抜け、ヘブラスカの間へ向かう作業用リフトへ乗り込んだ。



――ズズン。

リフトが下層へ到着した途端、巨大な振動が本部全体を揺らした。

リナリーが小さく息を呑む。



――ドォォォン!!

爆発音とともに、目の前の吹き抜け空間へ巨大な火花が散った。


ラビが反射的に顔を上げた、その瞬間。
吹き抜けの中央を降下していた昇降機の側面が爆ぜ、足場が大きく傾いた。


/ 1153ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp