第49章 【第四十四話】泣き声の方へ
Side:ラビ
――医療区域。
重い鍵が回る音に続いて病室の扉が開き、中にいた全員が一斉に振り返った。
そこへ立っていたのは、ルベリエだった。
その姿を認めた途端、病室内の空気が張り詰める。ラビは目を細め、扉の前に立つ男を睨んだ。
「……何しに来たんさ」
ルベリエは答えず、ただ真っ直ぐリナリーへ視線を向ける。
「リナリー・リー」
名を呼ばれ、リナリーが顔を上げた。
「きみはエクソシストだろう。――おいで」
冷たい声だった。
ルベリエは懐から通信機を取り出し、そのままスイッチを入れる。
――ピッ。
ノイズの向こうから、途切れ途切れに声が響いた。
『――本部内全団員へ』
聞こえてきたのは、疲弊を隠し切れないまま、それでも必死に冷静さを保とうとするコムイの声だった。
『ファインダー及び科学班は、イノセンス搬送を最優先。方舟三番ゲートより、順次アジア支部へ退避してください』
ラビが顔を上げ、隣でリナリーが息を詰める。
平静を装ったその声の奥に、どれだけの犠牲を飲み込んでいるのかが滲んでいた。
『これより、本部の撤退を開始する。……まず探索班は――』
そこで、ルベリエが通信を切った。
「聞いたかね?」
リナリーの肩が大きく跳ねる。
ラビの背中を、嫌な予感が這い上がった。
――やめろ。
「ヘブラスカを囮にするそうだ」
――言うな。
そう思った時には、もう遅かった。
「聞こえたか、と聞いているんだ。リナリー・リー」
握り締められたリナリーの指先が、白くなる。けれど、ルベリエは少しも揺らがなかった。
「エクソシストが戦うべきものが、そこにいると言っているんだ」
言い終えると同時に、リナリーの腕を掴む。
次に気付いた時には、ラビもルベリエの手首を掴んでいた。
考えて動いたわけじゃない。
身体が、勝手に動いていた。
ルベリエの視線が、ゆっくりとこちらへ向く。
「また、その目かね。ブックマンJr.」