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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第47章 【第四十二話】『私』として、ここに



「当たり前。付き添い代さ」

呆れて、また笑ってしまう。


息を吐き、窓の外へ顔を向けた。


夕暮れに染まる本部。

ラボから聞こえる、機械の低い唸り。
遠くで誰かが呼び合う声。

完全に元通りではない。


誰もが傷を抱えたまま。

それでも、本部は少しずつ息を吹き返していた。



喉元の亀裂へ触れる。


熱は穏やかだった。

怖さが消えたわけではない。
また何かが起きるかもしれない。

この力が、この先どう変わっていくのかも分からない。


あの男も、まだどこかにいる。

母のことも、私のことも知りながら、何も明かさないまま。


それでも、もう目を逸らしたくはなかった。


「……なあ」

ラビが、ふと声を落とした。


振り向く。

ラビは顔を逸らし、背もたれに重ねた指へ力を込めていた。


「今度、怖くなったらさ」

一度、言葉を切る。

「一人で何とかしようとする前に、ちゃんとオレ呼べよ」


メモ帳へペンを走らせる。


『うん』

続けて、もう一行。


『でも、ラビも怖くなったら私を呼んで』

ラビが瞬きをした。


私は彼を見つめながら、さらに書く。


『貴方も、平気な顔で抱え込む癖があるから』

数秒の沈黙。


ラビは顔を逸らしたまま笑った。


彼は、いつだって笑うのが上手い。
けれど今は、困った顔を隠しきれないまま笑っていた。

そんな彼へ、私も笑みを返した。



ラビは片手で頭を掻き、それから私の手へ触れる。

「……ま、オレも人のこと言えねぇか」


重なった指先を見つめながら、ラビは続けた。

「お前が倒れてから、ずっと落ち着かなくてさ」


触れ合った指へ力がこもる。

「誰か一人に、こんな必死になるなんて……思ってもみなかったんさ」



言葉の代わりに、繋がれた手を握り返した。

ラビが顔を上げる。


「……ほんと、似た者同士だな。オレら」

頷くと、ラビも同じように握り返してくれた。



繋がれた手が、温かい。

失いかけた日常は、確かに戻り始めていた。



こんな穏やかな時間が、これからも続いていくのだと思っていた。





――この時までは。


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