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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第46章 【第四十一話】特別という祈り


その時。

コツ、と硬い靴音が響いた。


壊れた計測器の向こうから、ルベリエが一歩だけ前へ出る。



冷たい金色の瞳が、血に染まった床を。

処置を受けるティファを。


そして、銀色の亀裂が走った喉元の紋章を、順に捉える。


「……興味深い」

静かな声。


その一言に、ラビの目付きが変わった。


「……見んなよ」

声が、殺気を帯びる。


ルベリエの視線が、ラビへ移った。

ラビは血を流したまま、一歩前へ出る。


「こいつを……研究材料みてぇな目で見んな」

「ラビ」

アレンが止めるように名を呼ぶ。
ラビは止まらなかった。

「ティファはモノじゃねぇ」

声が、張り詰めていた。


怒りで。

恐怖で。


「聖女でも、救済装置でもねぇ。生きてる人間なんだよっ……」


室内が、静まり返った。


コムイは、ラビを止めなかった。

リナリーも。

アレンも。


神田も、ただ鋭い目でルベリエを睨んでいる。



ルベリエは、暫くラビを見ていた。


その表情は、何一つ動かない。


「……処置を優先しろ。死なれては困る」

その言葉に、ラビは奥歯を強く噛み締めた。


だが、言い返すより早く、医療班がティファの身体を担架へ移した。

「手術室へ運びます! 道を開けて!」


ティファが運ばれていく。


ラビは、追おうとして足を踏み出した。

その瞬間、身体が大きく揺れる。


「ラビ!」

アレンが咄嗟に肩を支えた。


「離せ……」

「君も治療が必要でしょ!」

「ティファの後でいい……!」

ラビは、担架から目を逸らさない。



長い銀髪が、揺れながら扉の向こうへ消えていく。



その姿が完全に見えなくなるまで、一度も視線を外さなかった。



やがて、重い扉が閉じる。



隔離処置室には、血の匂いと沈黙だけが残った。



ラビは、扉へ向けたままだった手を、ゆっくりと下ろす。

その指先には、まだティファの温度が残っている気がした。



「……絶対、戻ってこいよ」

掠れた声が、静かに落ちる。




誰に命じるでもなく。

祈るように。


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