第1章 出会い
丁寧に挨拶をしてる姿から、きっとしっかりした人なんだろう。それに話し方がとても心地良く感じる。
だから気になったのかもしれない。
いや、違う。
理由なんて、まだわからない。
ただ、気付けば視線だけが何度もその人を追っていた。そしていつの間にか目の前に来ていた。
「松村さん」
「え、あ!はい」
「初めましてですよね?と申します。〇〇さんのメイクをしてます」
「松村北斗です。初めましてですね」
「ご挨拶遅くなってすみませんでした。撮影本当にお疲れ様でした」
「ありがとうございます。…あの」
すごく丁寧に挨拶されて話し方すごく柔らかくて心地良いです。って心の中では伝えたけど、声に出す前にさんが呼ばれてしまった。
「すみません。ご挨拶してきますね。これから、どこかで一緒にお仕事できたら嬉しいですね」
「はい」
「それでは失礼しますね」
ふわりと軽やかな笑顔を残してさんは行ってしまった。
胸が高鳴るって表現があるけど、今の俺はそれを体感したと思う。その声も笑顔も俺の胸を高鳴らせるには充分だった。
打ち上げの帰り道。頭の中はさんのことしか浮かばなかった。
「名前なんていうんだろ」
独り言を呟く。
もしも次会えたら絶対教えてもらう。
そう決意した帰り道。
気付けば、頭の中ではさっき聞いた声が繰り返し流れていた。