第22章 陽気な家族のための小舞曲
「あ!お姉ちゃん!おはよう」
「おはよう、風香ちゃん」
風香ちゃんの顔を見て思い出した。今度、風香ちゃんにもあのフルーツタルトを買ってきてあげよう。
「陽兄?」
「そうなの。ノックしても出てこなくて・・・。まだ寝てるのかな?」
「構いやしないから入っちゃいなよ」
さすが兄妹。遠慮がない。風香ちゃんはそのまま陽太の部屋の扉をバンと開いた。
部屋は男の子の部屋っぽく、多少散らかってはいるが、まあまあきれいな方だと思う。もちろん、陽太以外の男の子の部屋なんて見たことないが。
私の家と陽太の家は、同時にできた建売で、ほとんど構造が一緒だ。陽太が使っている部屋は家では私が使っている。自分の部屋と間取りが一緒の所に陽太がいる、というのは何か妙な気持ちにならないでもない。
あ・・・なんか、陽太の匂いする。
1学期の中間や期末のときも『合宿』で陽太の部屋を訪れてはいたが、こんな風に陽太の匂いを感じることはなかった気がする。
あの、お祭りの日のせいかな・・・。
陽太の精液を・・・、とか思い始めて、慌てて頭を振る。
いけない、変なこと思い出しちゃうところだった。
「陽兄!お姉ちゃんきてるよ!」
ちなみに陽太は適度に空調が効いた部屋の中、グースカとベッドの上で寝ていた。風香ちゃんは全く遠慮する様子なく、陽太の上掛けを剥ぎ取り襟首をむんずと掴むと陽太を引き起こす。
ついさっきまで幸せそうに眠っていた陽太が、「ぐえ!」っと妙な声を上げて叩き起こされるのを見るのはなんとなく忍びない。
ごめん、陽太。
「わ!風香!おま、なん・・・え?あれ??!」
突然、起こされ、目の前に妹の顔があり、更に私もいたものだから、陽太は大層混乱していた。本当に、ごめんなさい。
「とっとと起きなさいよ!もう!ホント!この部屋、臭うわよ!換気しなさいよ!!」
風香ちゃん、容赦ないなあ。エアコンを消すと、ガバっと窓を開ける。
「おはよう、陽太」
眠い目をこすりこすりしている陽太に声をかける。
寝起きの顔もかわいい。陽太はまだ意識がはっきりしていないらしく、もあっとした顔をしている。