第43章 勉強会・後日談
「…………」
相澤は目を細めた。
(教え方が上手いんじゃない)
(……『人に影響を与える力』があるんだ)
ユカリ自身には、誰かを変えてやろうなんていう大層な野心も、傲慢さもない。
ただ、目の前にいる相手と真っ直ぐ向き合う。
困っていれば手を差し伸べる。
悩んでいれば話を聞く。
そして、その人間が自分自身の力で前へ進めるように、ほんの少しだけ背中を押す。
それだけだ。
それだけなのに――。
関わった人間は、いつの間にか変わっていく。
本人が気づかないところで、誰かの力になっている。
「……ったく」
相澤は小さく息を吐いた。
「……あいつらは、本当にいい先輩を持ったな」
誰もいなくなった廊下に、低い声が落ちる。
教え子たちが成長していく姿は、教師として頼もしい。
けれど、それ以上に。
かつて自分が受け持った生徒が、今では後輩たちの背中を押し、道を示す存在になっている。
その事実が、相澤の胸の奥をほんの少しだけ温めていた。
――自分が教えたものが、ちゃんと次へ繋がっている。
そんな気がした。
「……さて」
相澤は首に巻いた捕縛布を軽く直す。
「俺も仕事に戻るか」
踵を返し、ユカリが向かったのとは反対方向へ歩き出す。
静かになった放課後の廊下に、相澤の足音だけが淡々と響いていた。