第39章 Team Up Mission
『――みんな』
『一緒に笑ってくれて、ありがとう』
『私……みんなと過ごせて、すごく幸せだった』
『……ずっと、忘れない……』
―――瞬間、エコーの全身から血の気が引いた。
呼吸が止まり、ユカリの手を握ったまま金縛りのように固まる。
(な……んだ……今の……声は……!?)
何度も、何百回と聴いてきたあの感覚。
忘れもしない、己の個性が発動したときの衝撃。
間違いなく――『個性・遺声』
死を迎えた人間が、その生涯の最期に遺した言葉を聴く個性だ。
エコーの額から、ドッと冷や汗が吹き出す。
視線を下ろす。
そこには、今まさに生きているユカリがいる。
自分の手を握り、不思議そうに首を掲げて微笑んでいる。
「……エコーさん?どうかしましたか?」
生きている。
目の前で呼吸をし、温かな体温を持って笑いかけている。
だが、エコーの手は、原因のわからない恐怖で微かに震えていた。
(死の間際じゃない……なら、どうしてだ……? どうしてこんな、大切な人たちへ宛てた『最後の感謝』が……いまの彼女から聞こえるんだ……!?)
目の前に立つユカリの笑顔が、急に胸が締めつけられるほど儚く、今にも消えてしまいそうに見えた。
「ううん……なんでもないよ」
エコーは必死に動揺を押し殺すと、作り笑顔でそっと手を離した。
これ以上不安を煽り、彼らの旅立ちを邪魔するわけにはいかない。
「気をつけて帰るんだよ」
「はい! 三日間、本当にありがとうございました!」
三人は送迎車へと乗り込み、車窓から元気に手を振る。
車が滑り出し、朝の街並みへ少しずつ遠ざかっていく。
エコーはエントランスに立ち尽くしたまま、自分の手を開き、じっと見つめていた。
(……ユカリさん)
脳裏に焼き付いて離れない、あのあまりにも温かく、切ない「ありがとう」の声。
なぜ、まだ訪れていないはずの『彼女の最期』が、自分に届いてしまったのか。
その恐ろしい意味を――今のプロヒーロー・エコーはまだ知る由もなかった。
朝の澄んだ風が吹き抜ける中。
エコーの胸には、拭い去ることのできない不穏な胸騒ぎだけが、静かに残されていた―――