第38章 日曜日
「……だから、帰ってきたら聞いてくれる?」
ユカリは掴んだ腕にぎゅっと力を込め、まっすぐに見つめ返してきた。
肌越しに伝わってくる体温と、強くなる指先の力。
喉の奥がカラカラに乾く。
爆豪は重い口を開くと、絞り出すように答えた。
「………ああ、聞いてやる」
「ありがとう」
それだけで十分だった。
はずなのに。
数日間会えなくなる寂しさと、絶対に無事で帰ってきてほしいという思いが胸を突く。
爆豪は照れを隠すようにフイッと視線を逸らすと、空いた方の手を伸ばしてユカリの頭をひと撫でし、不器用に言葉を付け加えた。
「……気ィつけて行って来い」
ユカリは一瞬目を丸くしたあと、愛おしそうに目を細めて笑う。
「うん。わかった」
噛み締めるように頷く。
そしてユカリは爆豪の腕からゆっくりと指を離していく。
「じゃあ、おやすみ」
少し名残惜しそうに振り返り、軽く手を振りながら彼女は去っていった。
(……帰ってきたら、全部聞かせろ)
遠ざかる小さな背中に、胸の中で強く願う。
(今度こそ——)
その続きを聞くために。
爆豪は夜風に吹かれながら、その姿が見えなくなるまで、ただじっと見つめ続けていたのだった。