第3章 暫しの別離
「あとは、七海くんをよろしくね。
…八条くん。ありがとう」
ふふっと、笑う森川を気づいたら抱きしめていた。
「七海ごめん、まじで、後で殴っていいから、ちょとまって」
「別に」
「も~、苦しいって~!」
「あぁぁぁあ、もう、まじで、これは森川が悪い。本当、そういうのはよくないって…」
ぎりぎりまで耐えたが、結局涙をこぼす八条。
「まじで、たまには帰って来いよ…。七海と迎えに行くから」
「いや、いい、大丈夫です…。」
「いや、本当に。まじで。」
「あははっ、ありがとう」
社内の関係各所へしばしの別れを告げ、
七海の運転で空港へ向かう。
車の中は静かだった。
景色を眺める。
あぁ、
このまま時間が止まってしまえばいいのに。
そんなことを考えてしまう。
隣を見る勇気はなかった。
七海もまた、必要以上に口を開かなかった。
ただ信号待ちのたびにこちらを気遣うような視線だけが向けられる。
その優しさが、余計に胸を締め付けた。
やがて車は空港へ到着する。
車を降り、空港内へ足を運ぶ。
伝えたい言葉はいくらでもあるはずなのに。
喉の奥で絡まってしまい、何ひとつ形にならない。
息が詰まる。
思うように呼吸ができない。
胸が張り裂けそうになる。
その時だった。
「さん」
優しい声が名前を呼ぶ。
顔を上げると、七海がいつもの穏やかな表情でこちらを見ていた。