第1章 出会い
「最近ちゃんと寝ているかい?しっかりと…」
その言葉を少しだけ丁寧に遮る
「も〜、心配しすぎですよ〜。大丈夫です!」
ふんっ、と気合いをアピールする森川に
そうかい、と柔らかく返事をするお婆さん。
「お邪魔しました!」
丁寧に挨拶をして営業車へ乗り込む。
「ふぅ〜。お疲れ様。ごめんね。初日から。」
「いえ、とても勉強になります。」
「あ、これあげる」
さっきのお菓子だ。
「甘いもの好きなんじゃ…」
「もしかして七海くん、甘いの嫌いだった?」
「いえ。好きです。」
「ならよかった!次は〜……えっと。」
「森川さん。」
「うん?」
「運転。変わります。」
「え、あ、運転できるの?!」
「ええ。」
それから、彼女の身の回りの雑務を半年間。
できるだけこなした。
彼女の負担が減るように。
その度、彼女の凄さを身をもって感じた。
顧客のメモ・書類の整理・タスク管理
毎日のスケジュール・KPI
(KPI=目標までの途中経過管理)
そして、目に留まる。
《七海くん育成メモ》
目標:3ヶ月で自立!
・誕生日7/3
・甘いもの○
・珈琲○
・サンドイッチ○
・油っこいもの△
・結果承認よりは
プロセス承認の方が反応○
・対人○笑顔もうちょっと…!
・時間管理○
・証券理解○
・プロセス管理△もう少し!
・~
・~
・~
ズラりと並べられる自身の取扱説明書
よく当たっている。
「……どこまでも面倒見のいい人ですね。」
そんなある日、森川は会社に姿を表さなかった。
「なぁ、七海〜。森川しらねぇ?」