第2章 勘違い
目をぱちぱちさせながら、口をぽかーんとさせている森川。
「…?どうぞ。」
丁寧に助手席のドアを開ける七海。
「あ、え、っと…うん…。」
そっと車に乗り込み、“しめますよ”と丁寧にドアを閉めてくれる七海を見上げる。
(車はあんまり詳しくないけど…これって…)
BMW 525Li Exclusive M Sport。
新車だと900万超。
(とんでもない車なんじゃ…)
ゆっくりと動き出す車。
車の雰囲気も相まって、なんとなく緊張してしまう。
「…どうしたんですか」
「え、あ、、いや、その、すごい車乗ってるね…」
「他にお金を使う場所がなかったので」
「なるほど…(????)」
「…シンガポールの準備は順調ですか?」
「うーん、まぁ…。
時差が1時間しかないから普通にWebミーティングとかやってるし。
向こうが1時間遅いから夕方の会議はどうしても定時過ぎちゃうけどね」
「あぁ、それで遅かったんですね。」
「そうそう。」
「私に手伝えることがあれば何でも言ってください。」
「ありがとう」
そういって、ふぅ、と息を吐き目を閉じる。
ほんの数分。
車から流れる音楽を聞きながら、
座り心地の良い座席を堪能する。
「…つきましたよ。」
「…。」
「…?」
「もう少し乗っててもいい…?」
目を閉じたまま尋ねてみる。
「?えぇ。いいですよ。」
ゆっくりとした時間が流れる。
たった数分だけ。
ほんの少しの幸せ。