第2章 勘違い
車内の冷房が心地よい。
10月とはいえまだ暑い。
「あ~…、シンガポール断ったらよかったかな~」
なんて口にしてみる。
もう事が進んでいる中、断るなんて選択肢…
というより、断る勇気はなかった。
「あ~…仕事やめちゃおっかな~…」
そう口にしたとき、車のドアが開く。
「何か言いましたか?」
「あ、お帰り。大丈夫だった?」
「えぇ。」
「ふふ、もう1人前だね~…」
「森川さんのおかげです。」
「そんなことないよ~…、もう私がいなくても心配ないね~♪」
「それはシンガポール行きの話ですか。」
「Ya, correct.」
「?」
「そうですよ~ってこと」
ほら、英語だとThat's right!みたいな?と、付け加える。
「シンガポールって独自言語なんてありましたっけ」
「いや、基本は英語かな?
けど、シンガポール特有の“シングリッシュ”っていうのがあるんだって~」
簡単なのだと…
"Can can!"(できるよ!)
"No need lah."(大丈夫だよ〜)
"Okay lor."(まあいいよ〜)
みたいな?
と、英語の授業が始まる。
「すごいですね」
「いや、私が知ってるのは今話した4単語だけ!」
最近覚えた!と、自慢げにほほ笑む。
「英語は話せるんですか?」
「ん~まぁ、そこそこ?七海くんは?」
「…日常会話程度なら。専門用語や業界用語はちょっと…」
へぇ、と感心した表情をする彼女。
「まぁ、英語圏の顧客は私が全部あっちに持っていくから安心して!」