第2章 勘違い
「えっと、これ、私誘われてるのかな?」
「それ以外に何があるんですか」
「そんな高価なもの、私受け取れないよ…」
目をぱちぱちさせながらチケットを眺める。
「お客様から、“森川さんによろしく”と言われたもので」
えー…。っとちょっと迷っている森川。
「今週土曜日19:00です。」
と、一言だけ添えて1枚のチケットを彼女の机に
すっと置いた。
以降は何事もなかったかのようにPCへ向かう。
余計なことは何も考えるな。
あくまでもお客様から彼女への贈り物として渡しているだけ。
私的な理由はない。
「…わかった。楽しみにしてるね!」
そうほほ笑む彼女に、“いえ”とだけ返事した。
そこからの仕事は通常運転。
いつも通り。
淡々と。
仕事が終わりオフィスに戻ると、用事があるようで
彼女は小走りで退勤した。
「七海おつかれー」
「八条さん。お疲れ様です。」
「水曜あたりで、軽く飲みにかない?」
この人の“軽く”は軽くない。
「…それは強制ですか」
「うん、強制」
「わかりました」
「なーーんだよ、嫌そうじゃーーん。」
ほんとに少しだけだからさ~!と、楽しそうな八条。
「じゃ、水曜日の19:00な。
あ、これ俺のLINE。追加しといて」
と、QRコードを差し出す。
(…しまった。)
ふと、彼女の連絡先を聞くのを忘れていたことを思い出す。
(…まぁ、急ぐ必要はないでしょう)
そうして、また1日が終わっていった。