第1章 出会い
ドアの前に立った瞬間、ドアがゆっくりと開く。
前が見えていなかったのか、彼女が寄りかかる。
だいぶ酔いが回ったようだ。
「…大丈夫ですか」
「んー…」
目を閉じたままの彼女。
「あの…」
「ん」
小さくため息をつき彼女を抱きかかえる。
「…二度目ですよ」
彼女からの返答はなかった。
店を出ると社員はいなかった。
ただ、周りの視線は痛い。
盛大にため息をついて彼女のマンションへ向かう。
部屋に上がり込み、ソファへ運ぶ。
自身のジャケットを脱ぎ、そっと彼女にかけてキッチンの戸棚へ向かう。
手慣れた様子でコップに水を注ぎながら、ふと彼女を見る。
ぎゅっと、七海のジャケットを抱きしめる彼女。
「七海くん…」
夢でも見ているのだろうか。
ジャケットを抱きしめながら寝言のように名前を呼ぶ。
「森川さん、水です。」
そういって近づいたとき、彼女が泣いているのに気づいた。
「…。」
すこし驚いたが、ゆっくりと声をかける。
「森川さん。」
「七海…くん」
ゆっくりと目を開け、起き上がる。
「なんですか。」
まだぼーっと、しているのか定まらない視線が
こちらをとらえている。
「…お水。飲んでください。」
そういって机に置いたコップへ視線をうつしたときだった。
「すき」
何かの聞き間違いか。
それとも自分も酔っているのか。
「…。酔いすぎですよ。」
はい、とコップを渡す。
「そっか…酔いすぎか。」
はは、と笑って水を飲み干す。
口から少しだけあふれた水が首を伝って、シャツに落ちる。