第1章 出会い
「私ね、シンガポールに行くんだ」
「…八条さんから聞きました」
「そっか」
「はい」
少しの沈黙が流れる
「七海くんはさみしい?」
そう聞いて、すぐに
「私はさみしい」
いつも素直な彼女の言葉に疑いはなかった
「じゃあ、日本に残ったらいいのでは?」
「あはは、確かに。」
それだけ言うと、お手洗い行ってくる、と離れていく森川。
七海自身もお手洗いに向かい一足先に部屋に戻る。
各々が三次会へ行くために身支度を始めていた。
「おー、七海。お前、次いく?」
「いえ」
「んだよ~、付き合い悪いなぁ~」
「八条さん酔いすぎです。ほら、財布忘れてます。」
「あー、さんきゅ」
無造作に財布をしまい、立ち上がる八条。
「はぁぁ、金城!」
「なんすか~?」
「今日はとことん呑むぞ!!」
「え~~!八条さんのおごりですよね?」
「はいはい、いいですよ」
「やった!!!いいっすよ、どこ行きます?
キャバ?ラウンジ?あっ、バニーちゃんのお店とか行きます!?」
調子のいい金城を軽く小突いて
「馬鹿か、いかねーよ、いつものバーでいいだろーが」
その様子を眺めつつ、なかなか戻らない森川を待つ。
「あー、七海。帰り気をつけろよ。」
「ありがとうございます。」
軽く会釈をして荷物をまとめる。
だんだんとまばらになる社員。
「七海!じゃーねー!!」
「おつかれー!!」
多方面から聞こえる声に、軽く会釈をしてお手洗いに戻る。