第1章 出会い
火照った顔に、滴る水。
予想外な言葉。
以降は何も起こらなかった。
「では、私は帰ります」
「うん、気を付けて」
それだけだった。
振り向かずに玄関へ進む。
振り向いてしまったら、
関係が変わってしまうような気がした。
彼女がどんな顔をしていたのかはわからない。
まっすぐと帰路へついたが、頭の中は一色だった。
家に着くなり、ソファに座り込みため息をつく。
「……はぁ。
だから飲み会は好きになれないんですよ。」
ヒールをはいていないせいせいか、
いつもより小さく感じる背丈。
酔いが回って頬を赤らめている顔。
水がゆっくりと落ちていく首筋。
「…。」
いま思えば、飲み会でべたべたと気安く触る男にも
苛立ちを感じる。
ゆっくりと立ち上がりシャワーを浴びる。
(…お風呂には入れたのだろうか)
(…ちゃんとベットで寝ているのだろうか)
何をしていても考えてしまう。
シャワーを済ませ、ふと、仕事用のバッグを持ち上げる。
(そういえば…。)
七海のカバンの中に紺色の封筒があった。
そっとかばんを閉じて、スマホを見る。
今更ながら彼女のプライベートの連絡先を知らないことに気づく。
「…月曜日にでも聞くか。」