第2章 ありきたりすぎる出会い
僕は、彩峰麻由佳という女をそう総評した。
それが、あの女との初めての出会いだった。
それから、何故かは分からないがずっと気にはなっていた。
どういう事か、傍に置きたいと考える自分がいたのだ。
他人に対してそんな気持ちになるのは、初めてだった。
そんな気持ち。
それが何なのか、何度考えても分からないまま彼女を杜王町に呼んだのだ。
「……」
僕は、下りかけた階段をまた上り始めた。
何故かというと、それは単純な興味。
彩峰麻由佳を、『見て』やろうと思ったのだ。
たったさっき彼女のものになった部屋のドアをそっと開ける。
「……な……」
彩峰は、だらしなく床に寝転んですぅすぅと寝息を立てていた。
「……んー……」
身じろぎをしながら、眠る彼女に不本意ながら見入ってしまう。
日に当たって、ツヤツヤと光るピンクみのある唇。
長い睫毛。
自分とは違う、触れたら柔らかそうな肌。
『見る』という目的をすっかり忘れて、僕は彼女の傍らに座り込むとその細い二の腕にそっと手を伸ばした。
触れるか触れないかまで距離を詰めた、その瞬間、彼女がゆっくりと目を開けた。
「……ん……?」
ぼんやりとした視線はフラフラと左右に揺れた後、ゆっくりと僕の方に向けられた。
「……露伴先生……?」
寝起きの甘ったるい声で名前を呼ばれて、僕の心臓はドクドクとうるさく音を立て始めた。
ええい、うるさい、何なんだ。
僕は……
「いつまで寝ているんだ」
自分の中にある、よく分からない感情をかき消すようにそう言うと、彩峰は勢いよく上半身を起こした。
「え!やば、そんな寝てました私!?す、すみません!」
「全く……」
僕は、『見る』気を無くした。
いや、正確には『見てはいけない』気がした。
なんとなく。
「漫画のネタ集めに、取材に行きたいんだ僕は。君が車の運転をするんだ、早くしろ」
「は、はいっ!……でも、お1人で行かれた方が集中出来るんじゃあ……」
「うるさい、口答えをするんじゃあないッ!」
「ひっ、すみませんんっ!」
僕の剣幕に縮み上がった彩峰が、そそくさと部屋を出て行った。
彩峰との生活は、まだ始まったばかりだ。