第2章 ありきたりすぎる出会い
「……彩峰麻由佳……」
僕は、階段を下りながらあの女との出会いを思い出していた。
彩峰は忘れているかもしれないが、あれは4か月前の事だった。
「露伴先生、本日はお越しくださいましてありがとうございます」
その日は、出版社の創立記念パーティとやらに呼ばれていた。
別に僕が出席する理由も特に見当たらなかったが、誘われて何故かなんとなく参加してしまっのだ。
「いやぁ、まさか露伴先生が出席してくださるなんて……お誘いした甲斐がありましたよ」
顔はなんとなく知っている編集者の男がそう言ってへつらってくる。
「いや、こういう場で人間観察も悪くないと思ったのでね」
僕は、当たり障りのない言葉をその男に返しながら周囲を見渡したが、これといって漫画のネタになりそうな人間は1人も見当たらなかった。
早くも僕は家に帰りたくなった。
何か、適当に理由をつけて帰るか……?
そう思った時、1人の女が僕の方……というよりは僕の隣にいる男に駆け寄ってきた。
「あ、編集長!こちらにいらっしゃったんですか!」
鎖骨位までの髪を揺らしてやって来たその女。
全体的にスラっとした印象。
そのどこか凛とした容姿は、いかにも仕事第一主義といった感じだった。
「お、彩峰。こちら、岸辺露伴先生だ。わざわざ来てくださったぞ」
「あ!そうなんですか!初めまして、彩峰と申します」
そう言って微笑んだ彩峰という女。
その微笑みで、どれだけの仕事を成功に導いてきたのだろうか。
そう思わせるような魅力が、彼女の笑顔にはあった。
「露伴先生、彩峰の見た目に騙されちゃあいけませんよ」
編集長と呼ばれた男が、僕の肩にぽんと手を置いた。
「どういう事です?」
「仕事が出来そうな見た目に反してねぇ、中身は割とポンコツなんですよ」
「……ほぅ……」
「ちょっ、編集長!酷くないですか!?」
彩峰は途端に情けない表情になる。
「私だって、見た目で散々苦労して……っ……これでも、頑張ってるのにぃ……!」
情けない顔はさらに崩れて、今にも泣きそうになっている。
第一印象は、仕事の出来そうな美人。
だが薄皮一枚剥がせば、どうやらただのポンコツらしい。
見た目で得をしているのか損をしているのか分からない。