第3章 なんかゲームみたいな生活
「まぁいい。その漫画、置くのは自分の部屋だけにしてくれよ」
「それは!……分かって、ます……」
彩峰がそう言ったのを最後に、会話は途切れた。
ただ、カチャカチャと食事をする音だけが部屋に響く。
僕は別に気まずくも何ともなかったが、相手はそうじゃあないらしい。
少し怯えた表情で、こちらを窺いながら食事を口に運んでいる。
「なんだ。言いたい事があるなら言えばいいだろう」
僕の言葉に、彩峰がビクっと身体を強張らせる。
「いえっ!……あの……えと……康一くんから聞いたんです、けど……」
康一くん?
彼が、こいつに何を言った?
僕は、この話にちょっとした興味を持った。
「露伴先生は、興味のない人間は家に入れない……って……」
彩峰は、スプーンをテーブルの上にコトンと置いた。
「どうして私の事を、この家に……?」
「……っ……」
僕は、言葉が出なかった。
彩峰を家に住まわせている事を自分でもどうしてか、分からなかったから。
「露伴先生?」
彩峰の澄んだ目が、僕の視線を捉えた。
その瞬間、僕の心臓は何故かトクンと跳ねた。
息が詰まって、何か言ってやりたいのに上手く言葉が出てこない。
「……別に、いいだろう、どうでも……」
やっとの事で、その言葉だけが口から出た。
本当に、分からない。
どうしてだ?
「……すみません、ヘンな事聞いて」
彩峰が、椅子から立ち上がった。
「最初に言ってましたもんね!私を露伴先生の犬にするって!」
その、自虐的な言葉に窮地を救われた。
「ああ、そうだな。理由なんか、それだけだ」
「そうですよね!食事終わったら、食器、シンクに入れといてくださいね」
そう言うと、彼女は自分の食器を持ってキッチンの方へ歩いて行った。
本当に、理由なんかそれだけだろうか?
本当は……僕は……
…………
なんなんだ……クソッ
そう思い始めたら、食事なんて全然味のしない塊になってしまった。
僕は、そんな味のしない塊になってしまったものをもやもやした気持ちのまま口の中に放り込み続けた。