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夜ご飯が欲しいだけなのに!! 【18R】

第2章 走る悪霊


静まり返った空間にのヒールの音がコツコツと虚しく響く。
だが、その規則正しい音の合間に、わずかにズレた別の足音が混じっている気がした。
一瞬足を止めそうになるが、気のせいだと自分に言い聞かせて前へ進む。
これ以上、恐怖に呑まれるわけにはいかなかった。


しかし、その油断が致命傷となる。



「……ッ!」



前方の薄暗い廊下の奥から、何かが猛然とこちらへ向かって走ってきた。
最初は暗がりのせいで黒い服を着た不審者のように見えた。
だが、それが距離を縮めてくるにつれ、の全身の毛穴が恐怖で逆立つ。
それは人間などではなかった。
陽炎のように輪郭を歪ませる、文字通りの『黒い影』そのものだった。
悲鳴を上げる間も、踵を返して逃げる猶予も与えられない。
凄まじい速度で迫ってきた黒い影――悪霊は、目の前くるとを冷たい床へと押し倒した。



「がはっ……、う、……いたっ……!」



背中を強打した衝撃で肺の空気が押し出される。
すかさず覆い被さってきた男のような体躯を持つ影が、の首元へ容赦なく太い両手を回してきた。
ギリギリと音を立てて喉笛が圧迫され、視界がチカチカと明滅し始めた。



(苦し…い、……放して……っ!)



実体のないはずの悪霊。
それなのに、首を絞め上げる手の感触は生々しいかった。
は涙目で必死に影の腕を掴み抵抗する。
しかし、どれだけ力を込めようともびくともしなかった。
次第に脳への酸素が途絶え、視界の端からじわじわと闇に侵食されていく。


必死に抗っていた両手からみるみるうちに力が失われ、やがて影の腕にただ弱々しく手を添えることしかできなくなっていった。


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