第6章 無数の手の跡
「――っ、はぁ、はぁっ、はぁ……ッ!」
弾かれたように目を開けると、は激しく冷や汗を流しながらその場に頽れた。
見上げればそこは見慣れた自室――801号室のドアの前。
またしても、あの忌々しい始まりの場所へと引き戻されていた。
気絶するまで何度も激しく犯され、ナカをドロドロに満たされた生々しい感触が、今も身体の芯に熱く残っている。
思い出すだけで足がガタガタと震えたが、ここに留まっていても悪夢が終わることはない。
進むしかないのだと自分に言い聞かせ、は重い足取りで再び廊下へ歩を進めた。
(やっとエレベーターまで辿りつけたのに……。あの張り紙の異変に気づけなかったせいで、また振り出しだなんて……)
今度こそどんな小さな異変も見逃さないよう、注意深く周囲を観察しなければならない。
そう分かっているのに何回もイカされ続けた肉体は、怪異に犯されまくった感触を思い出して奥のほうがズキズキと疼き始めていた。
(だめ……集中しなきゃ……っ)
気が漫ろになっていたせいで、異変に気がつくのがほんの一瞬だけ遅れた。
ふと横を振り向いた瞬間、806号室の窓ガラスにびっしりと無数の「黒い手の跡」が浮かび上がっているのが目に入った。
「っ!?やばい――」
本能的な恐怖に背筋が凍り慌てて自室へ引き返そうと踵を返したが、一歩遅かった。
窓ガラスの向こうからズルリと染み出すように現れた無数の黒い影の手が、逃げようとするの身体に一斉に襲いかかったのだ。
「いやぁああッ!離して、離してよ!」
抗う間もなく、は窓の前に大の字で磔にされるような体勢で壁に囚われてしまった。
冷たい無数の手が、同時に彼女の自由を奪っていく。
首、両手首、そして両足首をガッチリと強固に掴まれ動かすことすら許されない。身動きの取れない彼女に対し、残りの手が容赦なく服を強引にはだけさせていく。
シャツのボタンが引きちぎられブラジャーが引き下げられると、遮るもののなくなった豊かな胸がぷるんと夜の空気に剥き出しにされた。