第5章 張り紙に潜む悪霊
(まだ……一度もエレベーターにすら辿り着けてないなんて……)
その事実に、の胸に重苦しい絶望がのしかかる。
歩き出すたびに異変に遭遇し、その都度悪霊に手ひどく肉体を蹂躙されては、このドアの前に引き戻されてしまう。
出口への道は、想像以上に遠く険しいものだった。
だが、ここで立ち止まっていても、この不気味なループから抜け出すことはできない。
異変を見落とせば、またあの悍ましい目にあうだけだ。
「今度こそ……絶対に、どんなに小さなことでも見落とさない……!」
は溢れそうになる涙をグッと堪え、自分を鼓舞するように小さく拳を握りしめた。
今度こそ最新の注意を払い壁のシミから床の踏み心地にいたるまで、全ての神経を尖らせながら、再びエレベーターを目指して一歩を踏み出した。
壁や床、天井にいたるまで一歩進むごとに視線を走らせ、は極限の緊張感の中で廊下を進んだ。
不気味な気配や怪しい影がないか細心の注意を払い続けた結果、今度は何に襲われることもなく、ついに目的のエレベーターの前へと辿り着いた。
「やった……! やっと、やっと着いた……!」
その事実に張り詰めていた心が歓喜に震える。
安堵に胸を撫でおろし、は吸い込まれるように上り下りのボタンを押した。
しかし、歓喜に目を奪われていた彼女は気づいていなかった。
いつもなら気にも留めないエレベーター脇に貼られた紙が、全く違う不気味な文面に書き換わっていたことに――。