第4章 ※通り過ぎる黒猫
「――っ、はあぁっ!」
意識が戻り、は激しく上下する胸を押さえた。
見渡せばそこはやはり見慣れた自室――801号室のドアの前だった。
急いで自分の身体を見下ろすが、破られて膝まで脱がされかけていたストッキングもずらされてドロドロに汚れた下着も、何事もなかったかのように戻っている。
ナカに二度も深く注ぎ込まれ、あれだけ太腿を汚して床に垂れ流されていた精液も、嘘のように綺麗に消え去っていた。
壁の穴にハメられ、精液を潤滑油にして二度も激しく中出しされた悍ましい記憶と、ナカを抉られた生々しい感触だけは、今もハッキリと肉体に焼き付いている。
(やっぱり、あの壁に空いていた穴が『異変』だったんだ……)
冷や汗を拭いながら、は冷静に思考を巡らせた。
毎日通っているマンションの廊下だ。
あんなに不自然で大きな穴が空いていたのに、いくら疲れていたからといって今まで気づかなかったなんてあり得ない。
あれは、あの紙に書かれていた通りの明確な「異変」だったのだ。
「今度こそ、絶対に騙されない……。異変を見落とさなければ、進めるはず」
は強く自分に言い聞かせ、細心の注意を払いながら廊下を進んだ。
壁、床、ドアの隙間。
隅々まで神経を尖らせて歩いていると、前方の薄暗い廊下から、一匹の黒猫がトコトコと歩いてくるのが見えた。
「あ……猫。まぁ、マンションだし、どこかの部屋の飼い猫が脱走しちゃったくらい、よくあるよね……」
どこか張り詰めていた緊張が緩み、猫の愛らしい姿に一瞬だけ安堵した。
だが、その油断がいけなかった。
黒猫とすれ違った瞬間、頭の奥を激しい耳鳴りが襲い急激に世界がぐにゃりと歪む。
立っていられなくなるほどの猛烈な睡魔と、底のない闇に引きずり込まれるようにして、はその場に崩れ落ち意識を失った。