第1章 梨が落ちる
……――修さんは、東城会の若頭だ。
修さん自身も、風間組という組を率いている。
修さんは六代目体制下の東城会においては穏健派の筆頭で、篤実なお人柄として知られる六代目からの信任も篤い。
でも――……だからこそ、修さんには敵も多かった。
とくに近ごろまた徹底的な武闘派路線で勢力を伸張している錦山組には手を焼いているらしく、私も、錦山組――……こと、組長の神田強という男には気を付けろと、厳しく言い付けられている。
この、神田という男。
自身の立身出世のためには手段を選ばない類の男で、しかも大の女好きときているそうだ。
修さんを揺さぶるためだけに、修さんと情を結ぶ私を犯して殺すくらいの事はしかねないという。
「お前の身に何かあったら、俺はとても正気ではいられなくなる」――……錦山組による狼藉が激化しはじめたころ、修さんは私を胸に掻き抱いて、希うようにそう言った。
……――だから私は、この生活を甘んじて受け容れる事にした。
厳重なセキュリティがほどこされたマンションのこの一室で、ただひたすら修さんの訪いを待ち侘びるだけの、この生活を――……