第5章 『その温度を、まだ知らないふりで』
喉元へ添えられていた親指が、
ゆっくり撫でるみたいに動いた。
「あ……っ」
また肩が跳ねる。
その反応を見た瞬間。
ハンジの目から、
最後の余裕が消えた気がした。
「……もう無理」
次の瞬間。
唇が重なった。
「……っ、」
触れるだけみたいな、
短いキス。
なのに。
頭の奥まで痺れる。
離れたと思った瞬間、
またすぐ近づいてくる熱。
「𓏸𓏸……」
そのまま、
今度は深く息を奪うみたいに唇が塞がれた。
ソファへ沈む身体。
後頭部へ回された手が、
逃げられないように優しく支える。
苦しいのに。
離れてほしくない。
「ん、……っ」
漏れた声を、
また唇で飲み込まれる。
そのたび、
身体の奥が熱くなっていく。
ハンジの唇が離れる。
浅く乱れた呼吸だけが、
やけに近い。
「……っ、は……」
うまく息が吸えない。
熱い。
頭の奥まで、
全部ぐちゃぐちゃだった。
ハンジの指先は、
まだ後頭部を優しく支えたまま。
逃がしてくれない。
「……可愛すぎ」
ぽつりと落ちた声。
今までみたいな、
からかう余裕じゃない。
熱を隠しきれないみたいな声が混ざっていて、
余計に心臓がうるさくなる。
「や、っ……」
否定したいのに。
唇が触れただけで、
もうまともに言葉が出てこない。
その間にも、
ハンジの視線が唇へ落ちる。
見られてる。
それだけで、
また身体が熱くなる。
「……だめだって、それ」
小さく息を吐く声。
次の瞬間。
また唇が重なった。
今度は、
さっきより深い。
「んん……っ」
触れるだけじゃ終わらない。
ゆっくり角度を変えながら、
熱を移されるみたいにキスが続く。
そのたび、
呼吸も思考も奪われていく。
ソファへ沈んだ身体へ、
ハンジの腕が回る。
引き寄せられる。
ぴったり重なる体温。
「ぁ……っ」
喉の奥で、
甘い声が漏れた瞬間。
ハンジの動きが止まった。
「……今のはだめ」
腰へ回された腕は、
さっきより強くなっている。
ㅤ⠀ㅤㅤ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀