第4章 『夕凪にほどける』
ハンジはふっと目を細めた。
「でも、私は結構好きだよ」
「…………え」
空気が止まる。
倉庫の静けさが急に耳についた。
好き。
今、そう言った?
心臓が一気にうるさくなる。
「そういう顔」
「……っ」
だめだ。
絶対からかわれてる。
なのに。
期待した。
一瞬でも。
「……最悪」
「えぇ?」
「そういう言い方するのずるい……」
しゃがみ込んだまま顔を隠す。
熱い。
絶対赤い。
すると少しだけ間があってから、
ハンジが隣に腰を下ろした気配がした。
「𓏸𓏸」
「……なに」
「そんなに意識されると、こっちまで困るんだけど」
その声は、少しだけ静かだった。
思わず顔を上げる。
近い。
すぐ横にある顔。
伏せられた睫毛。
夕陽で薄く透ける髪。
「……ハンジ」
「うん?」
「それ、わざと言ってる?」
「どう思う?」
また曖昧に笑う。
答えをくれない。
なのに、期待させるようなことばかり言う。
ずるい。
ほんとにずるい。
「……嫌い」
「うわ、傷つくなぁ」
口ではそう言いながら、
ハンジは少し嬉しそうに笑っていた。
その理由を聞けないまま、
私だけがまた、勝手に振り回されていく。
_________fin.