第8章 肌寒い秋は
お風呂から上がると、共用スペースで飲み物を飲みながら休憩している2人がいた。
火照った肌は少し色付いて、髪はまだ濡れている。
――ちゃんと髪、乾かしなよ……。
息を呑むほど囚われる思考から逃げるように、別のことを考える。
「千景のえっち」
椅子に座る千景の後ろから抱きつき、耳元で囁いた。
ビクッと跳ねる肩。
途端に耳まで真っ赤になる顔。
極めつけは――微かな吐息を漏らしていること。
「な、なにが……?」
「ん?お風呂上がり、えっちだなぁって思って」
千景は少し言葉に詰まり、慌てながら「違う」と首を振る。
濡れた髪が頬を擽った。
「そう思う憂太がえっちなんだよ」
「そっか。そうだね。……僕、えっちだ」
余計に赤くなった耳を見て、クスッと笑みを零した。
――あの時からずっと、大好きなんだよ。
1年半以上も前、君が僕を助けてくれた時から……。
「千景、好き――いたっ!」
「そういうのは、ふたりきりの時にしろ!」
千景の隣に座っていた真希さんに、頭を叩かれてしまった。
反動で千景の頬に唇が触れたのは、ふたりだけの秘密。
千景は真っ赤のまま、少し震えていた。