第8章 肌寒い秋は
夕焼けの中で伸びた憂太の影に、私の影を伸ばす。
竹刀を持っている影の手を、縄のように伸ばした自身の影で捕まえた。
グッと引っ張ると、竹刀を落として私に飛び込んでくる憂太。
「わっ!……術式はずるいよ」
肩を掴んでバランスを整えた憂太と目が合う。
「やだった?」
「ううん。千景と近くなったから、嬉しいよ」
頬を撫でた憂太の手に引き寄せられるように、唇を寄せる。
軽く触れた唇が離れ、近くで舌打ちが聞こえた。
真希たちの存在を、一瞬忘れてしまっていた。
恥ずかしくなって、隠れるように憂太の胸に縮こまる。
「恥ずかしくなっちゃった?……可愛いね」
背中に回した腕に、ぎゅうと抱き締められる。
――あったかい……。
憂太は軽く背中を擦り、熱を残しながら離れていく。
名残惜しさを感じながら、竹刀を手にした憂太を見据えた。
振り翳された竹刀を避けようとしたが、術式を使った反動で、少し動きが鈍る。
躱し切れないと思い、目をぎゅっと瞑った。
でも、来ると思った衝撃は来なくて、ゆっくり目を開ける。
「君の術式は、呪力の消費量が多いんだから……」
「……わかってる。だから、術式を使った後でも、ちゃんと動けるようになりたいの」
顔の目の前で止めた竹刀を引き、手を差し出される。
その手を取って、起き上がった。
その後も少し続けて、夕日が見えなくなる頃、寮に戻った。