第10章 百鬼夜行
「はじめまして、乙骨くん。私は夏油傑」
何も見えなかった。
夏油傑と名乗った袈裟の男の動きは、誰も見切れなかった。
「あ、はぁ……はじめまして」
「君はとても素晴らしい力を持っているね。私はね、大いなる力は大いなる目的の為に使うべきだと考える」
夏油傑が言っていることは、よくわからなかった。
「非術師を皆殺しにして、呪術師だけの世界を作るんだ」
もっとわけがわからないことを言い始めた。
憂太の肩を抱き、歪んだ思想を語る。
私たちは何も言えず、ただその男を見る。
「僕の生徒に、イカれた思想を吹き込まないでもらおうか」
悟が来て、少しだけ心に余裕が出来た。
この人がいれば、だいたいのことはなんとかなる。
準1級以上の呪術師が集まり、この男がどれ程危険なのか、思い知らされる。
「悟〜、久しいね」
「まずその子たちから離れろ。傑」
どうやら2人は知り合いのようだ。
夏油傑は私たち1年のことを知り尽くしているようだった。
「特級被呪者、突然変異呪骸、呪言師の末裔。そして――禪院家の落ちこぼれ。君はよくわかっていないんだ。誰だい?」
今、誰を落ちこぼれと言った?
夏油傑は真希を"猿"と言った。
その瞬間、憂太は肩を抱く手を払い除ける。
「友達を侮辱する人の手伝いは、僕には出来ない」
夏油は憂太に謝ったが、間に入った悟に"宣戦布告をしに来た"と言った。
憂太は少し下がって、私の前に立つ。
影を伸ばして、憂太の手の影を握った。