第6章 約束の行方
「昨日の事じゃねぇなら、なおさら言えよ……」
俺は少し強めに言った。
でも、口を閉ざしたままのユキ
もしかしたら――
「……俺には言えない事なのか?」
そう聞くと、俯いたまま何か言いたげに口を動かすユキ。
「……っ!あーもういい」
俺は強引にユキの手を引いて、腕の中に閉じ込めた。
夢主side
一瞬、何か起きたのか理解出来なかった。
「俺には言えないことなのか?」
そう聞いてきた御幸
言えるなら言いたい。
でも――
言ったらどうなるんだろう、
言葉にしてしまったら、今の関係も、約束も、全て変わってしまう気がした。
返事に詰まっていると、急に私の視界が揺れた。
次の瞬間に目の前にあったのは――
御幸の胸元だった。
「み、御幸……?」
何が起きているのか理解するより先に、
心臓の音が一気に大きくなるのを感じた。
逃げようと少し身じろぎすると、
「……動くな」
低く押し殺した声。
いつもより近くで感じた声と、さっきより少し力の込められた腕に私の心臓がより高鳴った。
「今から、すげぇ無責任なこと言う」
「1回しか言わねえからな」
そう言って、
抱きしめている腕に、もう一度だけ力が込められた。
「俺さ――」
一瞬、言葉が切れた。
やけに長く感じる間に鼓動が、さらに速くなる。
「お前の事、好きだ」
息が止まる。
でも、次の言葉で――現実に引き戻される。
「でも、俺は甲子園目指しながら恋愛出来るほど器用じゃねえ」
御幸の腕の中で静かに話を聞いていた私は
自分でも驚くぐらい落ち着いていた。
ちゃんと分かってる。
御幸がどれだけ本気で野球に向き合ってるか、
一番近くで見てきたのは、私だから。
その時、ふっと
抱きしめていた腕の力が少し緩んだ。
「……でもな」
御幸の声が、もう一度すぐ近くで響く。
「誰かに取られるのを、見過ごせるほど大人でもない」
顔を上げると、
すぐ目の前に御幸の真剣な目があった。
「お前はどう考えてるんだよ」
その言葉に胸が奥が締め付けられた。