第6章 約束の行方
どう考えてるかなんて、とっくに分かっている。
なのに、言葉に詰まる……
「私も……」
やっと絞りでた声に伝える決意をし、御幸に視線を合わせた。
「私の好きになった御幸一也は
いつも野球に真っ直ぐで、真剣で……」
一呼吸置いたのに心臓がうるさい。
ちゃんと伝えたいのに。
いざ言葉にしようとすると思うように口が動かない私とは裏腹に御幸の表情がわずかに揺れた気がした。
「でも、だからこそ……今は――」
今は付き合うとか考えたくない。
私も目の前の野球に専念したい。
そう言うつもりだった。
「……なーんだ」
少し力の抜けた御幸の声に阻まれた。
「俺ら、考えてる事同じだったんじゃねぇかよ」
そう言った御幸は少しだけ苦笑いを浮かべていた。
「さっきも言ったけどよ、俺は野球も恋愛もって器用なほうじゃねぇ……だけど、ユキに対するこの気持ちも本気だ」
そう言って、再び力の入る腕に心臓の音がうるさくなる
「だから今は――約束優先でいいか?」
御幸の声は落ち着いていた。
でも、その中にある覚悟ははっきり伝わってきた。
私は少しだけ息を吸って、
返事の代わりに御幸の体を少し抱きしめ返した。
「お前と一緒に甲子園へ行く約束――それを果たした時に改めて言わせてくれ」
その言葉にさっきまでの喉のつっかえがとれ、自然と口元も緩んだ。
「約束……破ったら許さないから」
「おう!任せとけ」
今はただ、この関係が変わるのが怖いだけなのかもしれない……
けど、迷いのないその声に、胸の奥が少しだけ軽くなる。
この気持ちも、この約束も。
全部、先延ばしにしたいわけじゃない。
ただ、
ちゃんと叶えるために、今はしまっておく事にした。
繋いだままの距離が、
前よりもずっと近く感じた――