第6章 約束の行方
鳴の言葉よりも、私の頭から離れないのは、
御幸が私の手を引いた時の顔だった。
何も言わずに、ただ前を歩く。
私の手を引く背中は
強引なのに、どこか必死で――
なんで、あんな顔してたんだろう……
考えてもよく分からない。
ただ胸のざわめきだけが大きくなる。
いつも真剣に野球をしている御幸の姿や、
後輩や同級生をからかっている時の悪い顔の御幸、
調子が上がってる時に「狙い撃ち」を口ずさんでる御幸……
そして、
再び約束を交わした時の、あの笑顔。
鳴に言われた言葉よりも、
頭に浮かぶのは、全部御幸で――
あれ、私、なんでこんなにも御幸の事ばかり――
そこで、言葉が止まった。
違う
……ずっと、そうだったんだ。
無自覚は1番最悪って……ほんとその通りだ。
「……私」
ぽつりと、零れた声。
「御幸のこと、好きなんだ……」
それを口にした瞬間、
胸の奥にあった違和感が、すっと形を持った気がした。
顔が熱い……心臓が、うるさい。
でも――
嫌な感じはしない。
ただ1つ、ハッキリしたのは――
御幸のことが、好きだということ。
翌日、朝練の時間中
私は昨日の練習中のデータをまとめたノートを返すためにスタッフルームへ来た。
用事を済ませて部屋を出ようと扉を開けた瞬間、
「あっ……」
ちょうど、入ってこようとした人と目が合った
「……はよ」
「お、おはよう……」
御幸だった。
いつも通りの挨拶なのに、ぎこちなさが出てしまった。
あれ、いつも何話してたっけ……
次に繋ぐ言葉で出てこず、私たちの間に無言の時間が流れた。