第6章 門出
「まあ、あの感じだと敦君は今後も敵意さえ見せなければ殺されたりはしないだろう。何処かで鉢合わせても戦ってはいけないよ」
「判りました」
ニッコリ笑って敦に告げる。
そうこうしている間に探偵社のあるビルに着いた。
「戻りましたー。」
事務所の扉を開け、帰宅を告げる敦。
「遅かったな。」
「一寸、色々有りまして」
遅い時間だが、残業で残っていた国木田に声をかけられる。
「おい敦。太宰は如何した?」
「え?一緒に帰って――……あれ?」
振り返ってみるも、其処に今の今まで一緒にいた太宰の姿は無かった――。
―――
パタンッ
自分達以外の気配が無い階段に響き渡った扉を閉める音。
太宰は探偵社がある1つ下の階で歩みを止めていた。
そして、扉の閉まる音を聞き終わると後ろにある気配に話し掛けるべく振り返る。
「帰らなくて良かったの?治兄のこと、捜してるみたいだけど。」
「……構わないよ。それよりも探偵社に用事かい?アリス」
帰り際、ずっと跡をつけていた人物に先に話しかけられた。
「特には。只、どんな人達がいるのか気になっただけ。私、情報屋だし」
「へえ」
「虎のお兄ちゃんも優しそうだし、その人と話してる人も良い人そうだね」
見てもいない筈なのに、敦に話し掛けた人物の事まで話すアリス。
アリスの異能力を以てすれば大したことではないか―――。
「そうだね」
「随分変わったね、治兄」
「そうかい?アリスも少し見ない間に随分大人っぽくなったね」
「そうかな?まだ子供っぽいと云われるんだけど」
「中也の配下たちにだろう、それ」
「えっ!何で判るの!?」
アリスは驚く。
「ただの僻みでしょ、どう考えても。『中也』と呼ぶような仲なのだろう?」
「!」
太宰の呆れた顔をする。
「ーーーアリスも居場所を見つけたようだね」
「……うん」
少し嬉しそうに笑うアリス。太宰は小さく笑って、息を吐いた。