第6章 門出
「そんなことより。何でその事を知っているんだい?」
「治兄も中也と同じこと聞くの?」
「中也と一緒なんて冗談じゃない」
ケッと、らしくない様子を見せる太宰。それを見て笑うアリス。
「資料を分かりやすい位置に置いておいてくれたのはアリスとは思っていたけど真逆、見ていたとはね」
「ありゃ。バレてたの?」
「勿論、バレていたとも」
フフッと笑う太宰。
しかし、すぐに鋭い笑みに変わった。
「それで?その見返りに何を求めるのかな?」
―――
「あの、太宰さん。」
「ん?なんだい?」
「結局、現場に行ってないですけど…。」
「そうだね。」
「いいんですか?」
まだ、判っていなかった敦に太宰がハッキリと告げる。
「見た目は愛らしい少女なのだがね。アリスはポートマフィアに所属しておきながら自由を許されている程の人物なのだよ。与えられている役職は最低でも幹部クラスだ」
「ええっ!?あんな無邪気に笑っていた少女がマフィアの幹部!?否、確かに男達に有無を言わさずに命令に従わせてましたけど!」
――敦は混乱している。
「アリスの異能力はチートに近い。その気になれば抵抗する間も与えずに殺せる」
「チート…」
大量の弾丸が止まっていた光景を思い出す。
「そのアリスが動いたってことはあの組織に属していた人間はもう誰も生きてはいないよ」
「そんなっ!あんな小さな女の子が人殺しなんて!」
「あんな見た目をしているけれど、アリスは敦君の1つ下だよ。」
「え゛…17歳!?」
「否、まだ誕生日がきてないから16歳かな」
「確かに鏡花ちゃんよりは大人っぽく見えましたけど…まだどうみても少女でしたよ?」
「だろうね。だから敵は油断する」
「!」
「そして、恐らくあの世で後悔するだろう。『相手が悪かった』ってね」
「……そんなに強いんですか?」
「そりゃーもう。芥川君なんて比じゃないよ」
「!?」
あれだけ苦戦した芥川の比でないだって!?
敦の表情が険しくなる。
「ただ、好戦的では無いからね。敵意さえ見せなければ相手が敵であろうと誰にでもあんな感じなのだよ」
「それで……」
先程の忠告の意味を漸く理解した敦。