第10章 猫の日
中也は自身の執務室に戻ってきて、アリスと話し合った。
「アリス、新人との接点は?」
「うーん。私、ポートマフィアに殆ど居ないからなぁ。仕事で誰か引き連れていく時は中也の部下の人達だから新人じゃないでしょ?」
「そうだな」
「思い当たるとすれば…、あ!」
アリスの耳がピン、となる。
「何だ?」
「訓練!私、中也の訓練だけ皆と一緒に参加してる!」
「!確かに訓練ならアリスのこと知ってる奴居るかもな」
「割り出せる?」
「ここ最近の訓練に参加してた奴等なら顔は判る」
「…なんていうか、中也って本当は頭良いよね。頭に血が上ってなかったらだけど」
「一言余計だっつーの」
「痛ぁ!」
軽くデコピンを食らわせる中也に、悶えるアリス。
「訓練に参加していた新人全員当たっていくか」
「うん」
顔を洗う仕草を数回したあと、アリスは中也の胸にピョンと飛び掛かる。それを難なく受け止めると中也は部屋を後にしたのだった。
ーーー今日一日で凡ての新人を当たることは出来なかった。
任務に出ている者も居る。抑も、犯人が素直に見つかるようなところに居るわけが無いのだ。
「残りは明日だな」
中也は、アリスを抱えると駐車場へ向かっていた。
一階のロビーでエレベーターを待っているときだった。
「ワンワン!」
「!」
まるで中也を呼び止めるように犬の鳴き声がしたため、中也はゆっくりと振り返った。
「姐さんとこの犬か」
「ワンワン!」
尻尾を振って吠える。中也の言葉を肯定しているようだった。
「ワンワンワン!」
「何が云いてえンだ?」
首を傾げる中也。
「その猫を連れて帰るのか、って云ってる」
「!」
肩に乗っているアリスがポソリと中也にだけ聞こえるような声で呟く。
「ウーッ、ワンワン!」
「あ、喋れるのがバレた。犬だから耳が良いみたい」
「そうか。で、なんて云ってンだ?なんか怒ってるみたいだが」
「『はぁ!?アンタ喋れるわけ!?何でよ!』だって」
「本当にアリスだけしか喋れねえのな」
「くぅーん。ワンワン!」
「『そうなんです中也さん!それで、その猫だけ連れて帰るんですか?』だって」
「……。」
アリスの通訳に、返事をしない中也。