第10章 猫の日
ポートマフィア首領室ーーー
「動物に変える異能攻撃ねえ」
首領、森鷗外は中也の報告にフムと云いながら少し考えた。
「ここ最近迄のポートマフィアの所属者にそのような異能を持った者は居なかった筈だけどねぇ」
「侵入者でしょうか」
「若しくは、最近入ってきた新人か、になるね」
「新人、てすか」
「未だ把握できていない異能持ちが入社してきているのかもしれないね」
「成程」
入れ替わりの激しい組織だ。
凡てを把握するのにタイムラグが生じることもある。
「にしても目的が判らないね」
「此処に来るまでに追加で報告をうけまして、把握しているだけで7人被害にあっております。このままだと増える一方かもしれません」
「ふむ。被害者の共通点は?」
「アリスを除いて、全員下級構成員ということだけ」
「益々目的が判らないね」
幹部クラスが被害にあっていれば、組織の転覆や下剋上など理由も考えられたが、被害にあっているのは中也が報告した通り、アリスを除いて全員が下級構成員だった。男も被害にあっているので、女を狙った訳でもなさそうだということだけが分かったことだった。
「アリスちゃんは異能は使えるのかい?」
「使えるみたい。でも猫になることは防げなかったみたいだから、もしかしたら『敵意は無い』のかも」
傷付ける目的でないと仮定すれば、アリスの異能が中途半端に発動した理由も頷けるのだ。
「成程。然し、その可能性も視野に入れるとなると、只の愉快犯って線も考えなければならないね」
「地道に皆にお話聞いて、嘘かどうか見抜いていく?」
「埒が明かねえ」
「だよね」
アリスはうーん、と考える。
「否、相手はアリスちゃんを認識している新人という事だけは判ったから絞られるんじゃないかな?」
「……と、いいますと?」
森の言葉に疑問符を浮かべる中也。
「アリスちゃんは自由気ままで動いているから、存在自体知らない人間が多い。幹部クラスでも把握している人間は多くないだろう」
「成程。其処から絞ってみます。解り次第、報告いたします。犯人の処遇は如何致しましょうか」
「中也君に任せるよ」
「承知いたしました」
中也は頭を下げると退室していった。