第10章 猫の日
「お前、他の動物にされた奴と意思疎通図れるか?」
「くぅーん、ワンワン!」
「『皆違う動物なので無理です』だって」
「そうかよ。大変だな」
「ワンワンワン!」
「『そうなんです!それで、その猫連れて帰るんですか』」
「ああ。手前は姐さんの部下が面倒見てくれるンだろ」
「ワンワン!」
「……『何でその猫だけ』」
アリスの通訳は正確なのだろう。
その返事を待つように、犬は吠えずにお座りしている。
「あ?此奴は俺のだ。他の奴に扱わせる心算は一切ねェよ」
「!」
犬が驚いた顔をする。
「………ワンワンワン!」
そして、犬はその場を去っていった。
「最後、何て?」
「………そうですか、だって」
「…ふーん」
アリスの声のトーンが変わったことに気付かない中也ではない。違う言葉を云われたのだろうが、それ以上聞くことはなかった。
『餓鬼のくせに中也さんに色目使いやがって!』
アリスは思う。
自分は中也が判らないからと普段は中原幹部呼びなのに、ちゃっかり名前を呼んでいるくせに、と。
嫌味事を言ってきていた4人の内、1人はパタリと姿を見なくなっていた。
然し、後の3人はアリスに合うたびにチクリと嫌見事をいうのは辞めなかった。
そして、必ず訊いてきた事があった。
『アンタみたいな餓鬼に指輪を送る物好きな男って誰なわけ?顔を見たいんだけど』
自分のせいで、知らぬこととはいえ間接的に中也が悪く云われている事にアリスは申し訳なく思っていた。
此れが、姐さんの部下じゃなかったら反論も反撃もしていたかもしれないが。
関係性が崩れるのが怖くてアリスは黙る事にしていた。
「アリス」
昼夜の呼びかけでハッとするアリス。
「大丈夫か?何か身体に負担でも掛かってンのか?」
「ううん、大丈夫!一寸考え事ーー…」
『ネックレスは在ったのに指輪がないとなりャ、犯人が持ち去ってる可能性だってあンだろ』
アリスの脳裏に、中也の言葉が思い出される。
「指輪……」
「指輪?」
ここ最近、執着されていたアリスの指輪。
それだけが無くなっていたとなればーーー可能性の一つとして調べてもいいかもしれない。
然し、それを話すには凡てを中也に話す必要がある。