第10章 猫の日
「犯人の顔は見なかったのかよ」
「見てない…というか…黒い服にサングラス……此処の人達と同じ格好した……多分、呼び止められた声的に男の人って事だけ」
「……内部犯か」
中也が舌打ちする。
「猫にする異能力者なのかな?」
「聞いたことねえな……。そう云えばアリス、『ワンダーランド』は使えるのかよ」
「え、試してないけど…中也、試しに嘘ついてみてよ」
「嘘ッつってもな…酒飲んで良いぞ」
「あ、鈴の音ちゃんとする。ワンダーランド使えるのかも」
アリスはそう云うと、一寸考え込んで首を傾げる。
「如何したンだよ?」
「『ワンダーランド』が発動出来たってことは『ハッピーアンバースデー』も発動して良さそうだけど、って思って」
「確かにな」
アリスのハッピーアンバースデーは、アリスを傷つける場合に発動する技なのでアリスの疑問は尤もだった。
「まあ、よく考えたら害は無いけど、今のところ」
「会話もできてりゃ意思疎通も図れるしな」
中也も納得する。
そんな時だった。コンコンコン、と叩敲の音が響き渡る。
中也が入室を許可すると、姐さんが入室してきたのだった。
その後ろから、ゴールデンレトリーバーが一匹、その背中にセキセイインコが一羽留まっている。
「如何したんです?姐さん」
中也は立ち上がって姐こと尾崎紅葉を出迎える。
「私の部下が何者かに異能攻撃を受けてのう。動物に変えられてしもうたんじゃ」
「姐さんのとこもですか?」
中也の問いに、犬がワン、と吠え、鳥がピーッと鳴いた。
「ということはお主の所もかえ?」
中也は無言でアリスを抱えて見せた。
「…アリスかえ?」
紅葉の問いに、アリスはニャーと云い、頷いた。
アリスは顔をあげると、視線に気付き、そちらを見やった。ーーー犬と鳥がこちらを見ていた。
「他にも被害者が居るかもしれんのう」
「取り敢えず、首領に報告します。捜査はそれから」
「私も手伝いたいのじゃが生憎仕事が入っておってのう。済まぬな」
「いえ。その人達は如何します?」
中也の問に、犬が尻尾を振る。
「別の部下に預けようかと思うておる。何か分かれば連絡しておくれ」
「判りました」
その会話に耳もしっぽも垂らし、犬はくぅーん、と小さく鳴いた。