第8章 約束の日
指輪の色合いやデザインを決める間、アリスは常に混乱していた。
数多くある種類の素材に、数多くあるデザイン。
何れもアリスが見たことないものばかりだった。
「私、今まで貴金属の類は触れてきたことないから全くわかんないよ」
「だから好きなの選べンだろ。どれにする?」
「うぅー…沢山あって頭が混乱してる…」
「色が白いから何でも映えそうだしなァ」
中也は愉しそうに云う。
暫くの間、色々と話し合って決めた結果、プラチナのシンプルなデザインの指輪になった。
指輪が決まって帰ろうとアリスが立ち上がった時、支配人とは別の女性店員が入室してくる。
「中原様。此方をお持ちいたしました」
「有難う。彼女に着けてもらえるか?」
「?」
持ってきたものは、昨日受け取ったものより長い箱。
そこから出てきたのは、いま左手の薬指に嵌っている指輪についた石と同じモノが着いたシンプルなネックレスだった。
「お着けいたしますね」
「はい…」
されるがままにネックレスを着けてもらうアリス。
お似合いですよ、という言葉を聞きながらアリスは中也の方に首を動かす。
「何これ?」
「誕生日プレゼントだ」
サラッと云う中也。
「指輪も貰ったのに?」
「そりゃ婚約指輪だろ」
「駄目だ、中也兄と話してたら何が常識が分かんなくなってきた」
「何だよ。別に変なことしてねえだろ。あと中也」
「……こんな高そうなものを2つも…」
指輪とネックレス交互に見比べるアリス。
こうしてアリス達は店を去っていったのだった。
移動の車でもアリスは指輪の石を眺めていた。
綺麗な薄い空色をした石。
「アイスブルーダイヤモンドっていう石らしいぜ」
「初めて聞いた。綺麗な色してるね」
「気に入ってくれたんなら善かった」
「……有難う中也」
「あー…」
「何?如何かした??」
様子が可笑しくなった中也に首を傾げるアリス。
「呼ばせといてなんだが理性が保たねえ」
「え。」
サラリと物騒なことを云う中也。
「ホテル戻ったらその心算でいてくれな」
「えぇ!?」
ホテルまでの距離は、もうそう遠くない。
アリスが覚悟を決める迄には少し足りないのであったーーー。