第8章 約束の日
そう云われて付いてきた先はーーー
「中也兄……なんか高そうなお店構えしてますけど」
「そうかァ?あと、中也な」
入るぞ、と云われて店に入る。
ズラリと並んでいるのは高そうな貴金属ばかりーーー
アリス達は宝飾店に来ていた。
店には数名のカップルが指輪を眺めていたが、一組のカップルがアリス達を見た瞬間、ヒソヒソと話し始めた。
「ねぇあの子、どう見てもこの店に釣り合わなくない?」
「シッ。聴こえたらどうするんだよ」
「だって本当の事だし」
アリスにとって声は操作の対象ーーー
詰まるところ、ヒソヒソ話など意味を成さないのだ。
アリスは中也の手をキュッと握る。
「堂々としてろ」
「……うん。」
結構な距離があったため、流石に中也の耳にまで会話の内容は聴こえなかったが、アリスの仕草と入店してすぐに此方をチラ見してきたカップルに当たりを付け、睨みつける。
「「!?」」
堅気に向ける視線ではない程の睨みを効かせたせいか、カップルはカタカタと震えだした。
そんなことをしていると奥から支配人と思わしき人物が中也の来店に気付き、慌てて駆け寄ってくる。
「此れは中原様!ご来店有難うございます。本日はどのようなものをお探しでしょうか」
「結婚指輪を見に来た」
「承知いたしました。そうしましたら此方へ」
店の奥へと案内される。
ーーーVIP専用の個室だ。
通された部屋をキョロキョロと見渡しながらアリスも中也に倣ってソファに座った。
「……こういう部屋って常連さんしか入れないんじゃないの?」
「常連だからな」
「……ふーん」
「何か要らん事考えただろうが違うからな。このチョーカーなんかを此処で特注してる」
「そっか…」
中也の言葉には基本的に嘘がない。
それはアリスが一番知っていることである。
中也の言葉を聞いて安心したアリスは、再びVIPルームを見渡すのであった。