第8章 約束の日
「中也兄?ところで何処行くの?」
「〇〇ホテル」
「○○ホテルって出来たばっかりの?何でまた」
「アリスは苺の他に桃は好きだったよな?」
「桃?好きだよ。……紅葉姐に騙されて以来、ちょっと避けてるけど」
「あれ以来酒は飲んでねえよな?」
「飲んでないよ!思い出させないで!」
然りげ無く話題を変えられたことにアリスは気付いていないのだろう。
そうこうしている内に、車は目的の場所へ到着した。
車を停めて、ホテルのロビーへと向かう2人。
「うわーおっきなシャンデリア!」
キラキラしているシャンデリアに見惚れているアリス。
その隙に手続きを済ませる中也。
「行くぞ」
「うん!」
再び手を繋いでエレベーターに乗る。行き先は、ホテルの最上階のようだ。
「ご飯食べに来たんじゃないの?」
「部屋で食えばいいだろ。その方が静かに食事できる」
「……。」
クリスマスイブという特別な日を楽しんでいる人たちを見る事に、未だ抵抗感がある事を配慮してくれているのだろうとアリスは少しだけ握っている手の力を強めた。
部屋に入ると広い窓から街や海を一望できた。
「……賑やかだね」
「そうだな」
中也は、外套をハンガーにかけると手袋を外し、手を洗いに行く。アリスも呼んで仲良く手を洗うとソファに座った。
「誕生日おめでとう」
眼の前のテーブルに置かれているのはケーキの箱だ。
「ケーキ!開けていい??」
「おう」
中のケーキが崩れないようにゆっくりと箱を開けるアリス。
中から出てきたのは、外側から白から赤へと並べられたいちごのタルトケーキだった。
「うわぁ…綺麗」
箱を置き、中也の方を見るアリス。
「有難う、中也兄」
「その桃色の苺は桃の味がするらしいぜ」
「楽しみ!」
「……。」
ニッコリと笑うアリス。
その顔を見て、中也は黙り込む。
「中也兄?」
「アリス」
懐から小さい箱を取り出して、渡す中也。
「何これ?」
「開けてみろ」
「うん」
云われた通りに開けると、出てきたのは指輪だった。
その指輪を箱から出すと、中也は、アリスの左手薬指にその指輪を嵌める。
「綺麗」
その指輪を眺めるアリス。