第8章 約束の日
「思ってたより早く片付いたね?」
「ああ、急いだからな」
「ふーん」
アリスの手を取る中也。
そして、大人しく手を繋ぐアリスを見て、女は小さく舌打ちをする。
「中也君」
そこに現れたのは、黒蜥蜴だった。
「広津か」
「凡て片付いたようだ」
「ご苦労さん。俺はこのまま離脱する。後は任せた」
「承知した」
「またね~広津さん」
「ああ、素敵な夜を」
アリスも広津に挨拶を交わす。それが終わると中也はアリスの手を引いてその場を去っていったのだった。
その後ろ姿を見て、忌々しそうに女がぼやく。
「あの小娘、武装すらしてなかったじゃないですか。なのにお咎め一つないんです?」
「……何を云っているんだね?君は」
「だって、可笑しいでしょう。此処は戦場で女子供も一切関係ないところなのに」
「そんな戦場で庇われたのは君の方で、何一つ迷惑を掛けていない彼女に対して云える言葉では無いな」
「たっ、確かに私は最後にミスを犯しました。けれど、彼女は何もしていないではありませんか」
広津は近くにいた立原と銀と顔を見合わせる。
そして、立原が笑いだしたのを期に全員が笑いだした。
「な、何が可笑しいんです?」
「お前、彼女を俺達と同じか何かと思ってんだろ?」
「違うんですか?彼女は部隊にすら所属できない下級構成員……」
「彼女は五代幹部の1人だ」
「……え?」
広津の言葉をうまく理解できない女。
「少なくとも彼女は我々なんかとは較べものにならない位の地位に居ることは確かだ」
「そんな……!あんな餓鬼が……」
「言動には気を付けろよ三下。不敬罪でしょっ引かれてもしらねえからな。特に兄貴の前で云ってみろ。殺されるぞ」
「……。」
女は言葉を失った。
昼間、既に多くやらかしている。
「話はここまでだ。後片付けに入るぞ」
広津の仕切りで動き出す面々。
そんな中、暫く女は動くことができなかったーーー。