第8章 約束の日
時刻は夜の9時を過ぎた頃ーーー。
街の賑やかさとは別の賑やかさがその場を支配していた。
海沿いの倉庫の一角。
ポートマフィアにちょっかいを掛けてきた組織の殲滅が本日の仕事だ。
見せしめの為に派手に壊すように、との首領のご意向で中也が赴くことになったのだ。
「派手にやってるなー」
アリスはというと、中也の言葉通りに何もせずに近くに積まれているコンテナの上に乗って、足をブラブラとさせて高みの見物を決め込んでいた。
激しかった銃の音も、徐々に小さくなってきている。
ーーー終わりが近いようだ。
アリスはピョンとコンテナから降りて、一番激しい戦闘が繰り広げられている倉庫の方へと歩いていった。
その時だった。
「待て!」
「チッ、しつこい女だぜ!」
武装した男が1人と、それを追う形で女が1人。
アリスの前を過ぎ去ろうとしていた。
「なっ、貴女武装は!?何もせずにぼーっとしてる場所じゃないんだけど!!」
「……。」
女は昼間、アリスに絡んできた内の一人だった。
敵を逃さないように追い掛けていた筈だったが、アリスの姿を見て思わず文句を云ってきたのだ。
まあ、この状況下なら女の意見は正しいとアリスは理解していた為、反論はしなかった。
その隙がいけなかった。
「馬鹿め!此処は戦場だぞ!」
「っ!?仕舞った!」
そう云うと男は武装していたマシンガンをアリス達に向かってぶっ放した。
女は目を瞑る。
やってきたのは別の衝撃だった。
「何ボサッとしてンだ!」
「中原幹部!?」
腕を引っ張られ、中也の後方に投げ飛ばされる女。
「クソッ…!ガァ!!」
中也が銃弾を弾き返し、男を仕留める。
これで最後だったのだろう。
鳴り響いていた銃声は一切聞こえなくなった。
中也は男が絶命したのを確認し、女に近寄る。
「ほらよ」
倒れた女に手を貸して引っ張り起こす中也。
「あ、有難うございます。申し訳ありませんでした」
「戦場で油断は命取りだ。忘れンな」
「はい!」
女は嬉しそうに笑って元気よく返事した。
手を離すと中也は、アリスの方に歩み寄った。
「怪我は?」
「あるわけないよ」
そう云うと、アリスの目の前で止まっていた銃弾が小さい金属音を立てて地面に転がった。