【呪術廻戦】年下のきみが可愛くて。/みんな×主(先生)
第16章 海×陸
それから二週間。
廃ビルの前に、鈴と潮は立っていた。
崩れかけたコンクリートの建物は、昼間だというのに妙に暗い。
任務内容はシンプル。
■三級呪霊の討伐■
入学後の適性確認を兼ねた、いわば軽いテスト任務だった。
とはいえ。
「はぁ……」
潮があからさまにため息をつく。
「マジでこれだけかよ、余裕すぎだろ」
その声は呆れ半分、退屈半分。
一方で。
「ぬ、ぬぅ……」
鈴は廃ビルを見上げたまま固まっていた。
言い訳のできない空気。
逃げ場もない空間。
その場に立っているだけで、足がすくむ。
「……」
そっと潮の後ろに隠れるように一歩下がる。
さらに二歩。
気づけば完全に影に隠れていた。
子犬のように小刻みに震えながら、潮の後ろをついていく。
「おい」
潮は前を見たまま言う。
「そんなビビってんのかよ」
鈴は返事をしない。
いや、できない。
そのまま進んでいくと――
潮がふいに立ち止まった。
「っ」
鈴は気づくのが遅れた。
そのまま勢いよく、
どんっ。
背中にぶつかる。
「いた……っ……あ、ごめん……」
慌てて頭を下げる。
潮はゆっくりと振り返った。
「はぁぁ……」
大きなため息。
呆れた顔。
「お前」
「なんでそんなビビってんの?」
鈴は言葉に詰まる。
視線が泳ぐ。
「わ、私は……」
何か言おうとして、飲み込む。
その沈黙を見て、潮は少しだけ間を置いた。
そして。
「お前、術師向いてないよ」
はっきりとそう言った。
鈴の肩がびくりと震える。
「わ、私だって……」
小さく反論しかけて。
でも、それ以上は続かなかった。
唇を噛む。
悔しいのか、怖いのか、自分でも分からない。
潮はそんな鈴を横目で見たあと、舌打ちしそうな顔で頭をかいた。
「……はぁ」
もう一度ため息。
そして、背中越しに言う。
「心配すんな」
鈴が顔を上げる。
「俺が守るから。そんなビビんな」
ぶっきらぼうな声。
優しいのかどうかも分からない言い方。
でも。
それだけは嘘じゃないと分かる言い方だった。
鈴は目を瞬かせる。
「……うん」
小さく、ようやく声を出した。
潮は前を向いたまま歩き出す。