【呪術廻戦】年下のきみが可愛くて。/みんな×主(先生)
第10章 original
屋敷を出てから、数分。
夜の山道はしんと静まり返っていて、
風が木々を揺らす音だけが耳に残っていた。
にとっては初めての地で、
視線を巡らせながら歩いていた、その時だった。
──ぬるり。
道脇の暗がりから、黒い塊が這い出る。
人の顔のようなものを幾つも貼り付けた、粘ついた四級呪霊。
が「あ……」と声を漏らした瞬間、
ハヤミ「俺が祓うよ」
隣のハヤミが、一歩前へ出た。
次の瞬間。
バチッ──と、彼の腕に赤黒い呪力が奔る。
空気が軋んだ。
呪力が、無理やり圧縮されていく。
まるで、燃えきる寸前の炉みたいに。
が目を見開くより早く、ハヤミの身体が急加速した。
ハヤミ「ッ、らぁ!!」
振り下ろされた拳が、呪霊の頭上へ叩き込まれる。
──ドォンッ!!!
爆ぜるような衝撃。
呪霊は断末魔すら上げられないまま弾け飛び、
同時に山の地面が大きく抉れた。
土煙が舞い上がる。
木々がびりびりと震え、砕けた石がぱらぱらと転がった。
静寂。
その中心で、ハヤミがゆっくり拳を下ろす。
は、ぽかんと抉れた地面を見つめたまま、
「あっ………」
と、小さく声を漏らした。
四級呪霊一体に対して、明らかに過剰火力。
そんなの反応に気づいたのか、
ハヤミが振り返り、にっと笑う。
ハヤミ「俺の術式は、呪力励起(じゅりょくれいき)」
まだ拳から立ち昇る呪力の残滓を散らしながら、
ハヤミ「呪力を圧縮して、加速するんだ」
少し誇らしげな声音。
けれどは、感心するより先に、再び地面へ視線を落として、
「ハヤミくん……やりすぎだよ……」
抉れた山道を眺めながら、はぁ……と深いため息を吐いた。
「まったく……」
呆れ半分。
けれどその声には、どこか懐かしさも滲んでいた。
ハヤミ「ははっ」
ハヤミは楽しそうに笑うと、抉れた地面へ視線を向けたまま、
ハヤミ「見せたかったんだよ。に」
そう言って、そっと手を差し伸べる。
ハヤミ「ほら」
その手を取ると、ハヤミは崩れた地面を踏み均すように、
ゆっくり歩き出した。
転ばないよう支えるその手は、昔よりずっと大きくなっていた。